2010年3月13日(土)「スーパーサタデー 最先端と最前線の超一級講座」はこれまで広尾学園が行ってきた2009年度キャリア教育の総決算となります。
この日は日本全国から、21世紀の最先端を究めようとする科学者、最前線で開発に挑むエンジニア、医療のフロンティアに挑む研究者、若き法律家など、日本の現在と未来を支える皆さんが広尾学園に結集します。
この22講座が、生徒たちの学問への憧憬の念を育て、科学技術の高みをはるかに見上げる良い機会となることを願っています。
(順次、22名の講師の先生方をご紹介します)
創薬に関わる人々は「夢追い人」です。この世に人類が生き続ける限り、疾病は無くなりません。そしてその治療に必要な薬剤は私達が自然から見出し、またみずから合成してきたものです。21世紀に入り、世界はますます複雑になり、創薬の対象となる疾病もこれまでの感染症やがんなどに加え、生活習慣病、神経や精神疾患など多岐にわたってきています。このような状況は創薬に携わる研究者にとって真の腕の見せ所であり、また生き甲斐でもあります。グローバルな視点から、今後の創薬について考えてみたいと思います。
(※北先生は3月初旬ガーナで開催される「野口英世アフリカ賞記念シンポジウム」でパネル討論会に参加され、講座前日にご帰国予定です。)
実験室で解剖やDNAの分析を行い、生物のしくみ(メカニズム)を明らかにすることだけが生物学ではない。「なぜ、鳥は渡りを行うのか?」「なぜ、一部の鳥は一夫多妻になるのか?」このような生態がもつ機能(はたらき)や進化に関する問題を解くのも生物学の一分野である。かつては「多分、○○のためだろう」としか語られることがなかったこのような問題にも、野外での観察や実験から答えが与えられつつある。野外での生物学は標本や記載的な知識の収集にとどまるものではない。「なぜ?」に挑むフィールドサイエンスの世界を紹介する。
いまから40年前の2月11日、日本の科学者の夢をのせた日本初の人工衛星「おおすみ」が宇宙へと飛び立ちました。アポロ11号による有人月着陸が達成されてから半年後のことでした。戦後の混乱で米ロに大きく後れをとっていた日本は、その後の挑戦の積み重ねによって、小惑星探査機「はやぶさ」や月周回衛星「かぐや」、各種の宇宙望遠鏡などの打ち上げに相次いで成功し、いまや世界の最先端を走るに至りました。まもなく世界初の惑星気象衛星である金星探査機「あかつき」と世界初のソーラーセイルであるイカロスも旅立ちます。これら日本の宇宙科学研究の現状と近未来について紹介します。
現在,日本の製造業の中心的存在としてその牽引役を果たしてきた企業が,一般家庭への普及をも視野に入れた人間あるいは生物の形をした非製造業用のロボットを続々と開発し始めた。このような時代背景のなかで,講師らは人間型ロボットを用いた人間のメカニズム解明とその応用機器開発等を行っている。本講義では,現在開発中の様々なロボットを中心に紹介しながら,ロボット工学の基礎技術ならびにその応用技術について展望する。
宇宙線観測実験は、この世界が一体何からどのように作られているのかを探る素粒子物理学を生み出しました。また、近年ではニュートリノによる天文学を生み出す契機ともなりました。つまり宇宙線観測というものは、常に新たなる学問のパイオニアであると言えます。そして今また、新たなる学問が生み出されようとしています。それこそが暗黒物質と重力波、2つの新世代検出実験です。これらが検出されれば、我々人類は我々を育んできたこの宇宙の謎の解明にまた一歩近づくことになります。今回の講座では、暗黒物質と重力波とは何か?から最新の実験結果までを優しく説明しようと思います。是非ご聴講ください。
大リーグサミーソーサ選手の通訳や、カナダの億万長者の通訳・秘書時代のお話などを織り交ぜながら、語学の違いと文化の違いとは何か、現在日本の英会話教育の現状、そして通訳としての心構えなどをお話したいと思います。私自身も帰国子女であることから、留学経験者や帰国子女の皆さん、そしてこれから留学を考えている皆さんにもお話できることがたくさんあると思います。ぜひ気軽に質問等してくださいね。
私たち人間は宇宙にひとりぼっちなのでしょうか.それとも,地球のような星はたくさんあるのでしょうか.そもそも私たちが暮らす太陽系はどのように誕生したのでしょうか.太陽系の誕生に関する私たちの理解は爆発的に進んでいます.しかも,実験室の中で!実験室の中で地球外物質を分析したり,太陽系の材料となる小さな小さな塵ができる宇宙空間を実験装置の中につくり出したり,星を眺めるのとはちょっと違う天文学の世界に皆さんをご招待します.
太陽光が届かない水深数百メートルの海底にもサンゴ礁が広がっています。2000年代に入って,深海のサンゴ礁研究は盛んになり,世界各地に及んでいることが次第に明らかになってきました。2005年春には,アイルランド沖の深海サンゴ礁が統合国際深海掘削計画 (掘削船を駆使した国際科学プロジェクト)の掘削対象になり,史上初の深海サンゴ礁の掘削が実施され,その起源や進化に関する研究が進められています。講座では,掘削船による深海サンゴ礁掘削の現場や実際のサンゴ化石試料を観察することを通して,地質学や地球化学の側面から見た深海サンゴ礁研究の最前線を紹介します。
地震は、世界中どこでも起こっているのでしょうか?世界地図に地震の起こった場所を示すと、太平洋の周りを縁取りするように起こっていて、頻発する地震帯には日本列島がすっぽり入っています。地震の特性を知り、うまくつきあっていきたいですよね。そこで地震活動を逆手に取り、人工的に地震を起こして、波の伝わり方を調べて、海底下にある巨大断層の詳しい形が明らかになっています。地球深部探査船「ちきゅう」を用いて「巨大地震の巣に迫る」巨大地震の巣まで掘って、直接、岩石試料を取り、地震を科学的に調べよう、というプロジェクトをご紹介します。
現在のペースで人間社会が二酸化炭素を排出し続けると、大気中の二酸化炭素濃度が上昇し、その温室効果によって気温が上昇すると考えられています。このように温暖化が進行すると、地球上の多くの人々に様々な問題が生じる危険性があります。この講演では、地球の気候のしくみについてわかりやすく説明し、将来の地球温暖化予測に関する研究について紹介します。気候について理解することを通して、環境問題に対する考えを深めるきっかけになってもらえればと思います。
すばる望遠鏡、ALMA等最先端の観測装置から得られる観測データ、及びスーパーコンピュータを用いて得られた天文シミュレーションデータを立体視技術を活用して再構築し、一般向けに分り易く、インパクトのあるかたちで天文学の最前線を紹介し、教育普及活動等に供するデジタル宇宙データ構築のプロジェクトに関して紹介する。立体視映像(3D映像)のサイエンスへの応用の実際と、スパコンを科学技術研究で活用することの意義の一端を紹介し、後半ではプロジェクトで開発したソフトウェアを用いたデモンストレーションを行う。
恐竜の研究というとどんなことを思い浮かべますか? 砂漠や荒野での発掘作業? 映画のようなワンシーン? 実際は・・・。恐竜研究は古生物学に含まれていますが、その研究手法はとても様々です。生物学、工学、化学などの知識や、最新の科学技術を用いることで、わずかに残された化石から、彼らがどんな生き物で、どのように生活していたのかを解明する試みが進められています。講座ではそんな研究の一端をご紹介したいと思います。
本講義では、公共サービスを提供し、かつ税金を徴収する『政府』(省庁、地方自治体など)がなぜ必要とされるかを経済学の簡単な論理を用いて説明していきます。その中で、政府が行う政策がうまくいくこともあれば、実は何らかの原因によって失敗することもあるということについて、言及していきたいと思います。同時に、講義の内容を踏まえ、最近の日本における政治経済問題(不況に対する財政政策、事業仕分け、財政赤字問題など)について、できる限り皆さんとディスカッションしていく形で進めていきたいと思います
ロケットとはそもそも何なのか?という素朴な疑問に答えるため、ロケットの原理や仕組み、世界のロケットとの比較、日本のロケットの歴史、H-IIAロケットの製造から打上げまでについて写真や図を用いて解説します。そして、未来の宇宙開発を担う学生の皆さまに少しでも宇宙について関心を持ってもらえればと思います。
皆さんは「裁判所」や「裁判官」と聞いて、どのようなイメージを抱きますか。裁判所の仕事は、個人間などの法律的な紛争を解決したり、犯罪を犯した疑いがある人が有罪か無罪かを判断したりすることにより、国民の権利を守り、国民生活の平穏と安全を保つことです。この講座では、裁判官の日々の仕事や、日常生活について紹介し、裁判官の仕事の魅力とやりがいについてお話しするとともに、私自身がこの仕事を選んだ理由や、裁判官になるにはどうしたらいいかをお話しします。
昨今、地球環境あるいはエネルギー問題が叫ばれているが、その問題点の紹介をすると共に、それを解決するための最先端科学である核融合研究について紹介したい。核融合炉は化石燃料に頼らず、炭酸ガスを放出しない未来のエネルギー源として注目されている。その核融合炉を実現するためには、超高温のプラズマを限られた空間に定常的に閉じ込めて維持しなければならない。プラズマと核融合についての科学的な基礎を説明すると共に、新たなエネルギー革命を起こす核融合炉開発について紹介する。
コペンハーゲンで行われたCOP15には世界各国の首脳が集まって地球温暖化対策を話し合ったがきちんとした約束はできなかった。地球温暖化は着実に進んでおり、このまま放置すれば40年後、50年後には厳しい状況が訪れる。地球温暖化の実態に目を向け、それがどんな原因で起きているのかを突き止めることによって、温暖化を防ぐために私たちがしなければならないことについて考える。
(元日経サイエンス編集長、科学宅配塾副理事長)
最新のコンピューテッドトモグラフィ(CT)装置では数秒で全身を高精細にスキャンすることができます。その結果、非常に細かい病変まで診断できるようになりました。このCTのデータをコンピュータに蓄えコンピュータの中で内視鏡検査を行うという研究を1990年代より続けてきました。最新のコンピュータグラフィックス装置を用い、大腸や小腸、胃、気管、膀胱、血管など仮想内視鏡映像をご覧頂き、ディズニーランドのアトラクションのように体内飛行を体験してもらいます。
本講座では,まず造礁サンゴ(以下,サンゴと略記します)とサンゴ礁はまったく違うものであるという話から始めます。前者は生物,後者は地形あるいは構築物のことをさします。サンゴ礁では最近,サンゴの白化やオニヒトデの大発生などによって、サンゴの大規模な死滅が起こっています。サンゴが大量に死んでしまうと,そこの環境や生物,特に魚類はどうなってしまうのでしょうか。水中写真を多用してサンゴ礁の現状を紹介しながら,サンゴ礁生態系におけるサンゴの重要性を説明します。
ほんの15年程前までは、人間の脳の働きを知るためには心理学的検査と脳波しか方法がありませんでした。動物と違い、人間の脳を検査するためには、けっして傷つけてはいけないからです。しかし、近年の急速な科学技術の進歩により新しい検査方法が次々に開発され、人間の脳の活動(機能)がかなり詳細に分かるようになってきました。今回の講演では、脳波を使った嘘発見器の御紹介、脳の可塑性(機能の柔らかさ)、顔認知研究、痛みと痒みの研究、などについて、最新の研究をわかりやすく御紹介したいと思っています。
陸上の動物(例えばシカ、イノシシ等)が普段何をしているかは、双眼鏡で観察すればある程度わかる。しかし、海洋動物(例えばアザラシ、クジラ等)はそうはいかない。彼らは生活のほとんどを海の中で過ごすため、観察することができないのである。そこで考案されたのが、小型の記録計を動物に取り付ける「バイオロギング」という手法である。本講座では、バイオロギング手法を使った海洋動物調査の最前線を紹介する。
毎日何気なく会話している。そう,声を使ったことばのやりとりだ。でもこの声,どうやって生まれてくるのでしょう?また,声って人によって違うけど,どうして違うのでしょう?世界一の巨人と小人の声はもの凄く違うことになるけど,二人は互いのことばを楽々理解する。声が生まれてくる仕組み,そして,その物理的側面を眺めると,巨人と小人の会話が摩訶不思議に見えてくる。生まれて今日まで気づかなかったことばの不思議,一歩踏み込むと夜も眠れなくなる(?)ことばの不思議の扉を,さあ,一緒に開けてみよう。